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ぴんぽ〜ん♪ 龍ニィが帰国した数日後、私は龍ニィの住む隣の家へと来ていた。 「あら、葵ちゃん。いらっしゃい」 チャイムを押してからすぐにおばさんが出てきた。 「こんにちは。龍ニィ居ますか?」 「龍次まだ寝てるのよ。もうお昼になるって言うのに。葵ちゃん起こしてもらえるかしら?」 「はぁい。おじゃまします」 おばさんの横をすり抜けて靴をきちんと揃えて玄関をあがる。 勝手知ったる他人の家。龍ニィの部屋は二階の一番奥にある。 「あぁ、葵ちゃん」 「はい?」 玄関を上がってすぐにある階段を数段上がったところで声をかけられて足を止める。 「葵ちゃんが私の娘になったら凄い嬉しいから、頑張ってね?私も協力するわ」 ふふふ と笑みを私に向けた。 私もにっこり笑っておばさんにVサインを送ると、龍ニィの部屋へと向かった。 ノックもしないでそっと部屋の扉を開け体を滑り込ませる。 見ると龍ニィは布団の中で爆睡中。 ベッドサイドに近寄って、腰を下ろす。ベッドに頭を預けると結構な近い距離で寝顔を見つめた。 「龍ニィの寝顔、可愛いなぁ…大人の男の人には失礼かもしれないけど…。普段の顔もこのくらい幼く見えたら隣に並んでいても釣り合うかも知れないのに……」 膝立ちになって、そっと寝ている龍ニィの顔に自分のソレを近づける。ゆっくりと、起こさないように。羽のような優しいキスを龍ニィに降らせた。 「私のファーストキス、貰って?この前みたいなことがあって、好きでもない人に奪われそうになる前に」 そっと、寝ている龍ニィに囁く。寝ていてこのことは気づいてないだろうけど。 そう、龍ニィが居なかった時、名前も知らない男の子にキスされそうになった事がある。もちろん、殴って逃げたけど。 龍ニィ以外の人と…って考えただけでも鳥肌が立つ。 「さて、と」 立ち上がると、寝ている龍ニィの上に跨って乗っかった。 「龍ニィ、起きて〜??起きないと襲っちゃうわよ〜」 寝ている龍ニィを乱暴にユッサユッサと揺さぶり起こす。 「ぅあ?!あ、葵!」 目を開けた途端私が乗っかっているのに驚いたのか、何時もは低血圧で目覚めの悪い龍ニィも一発で目が覚めたようだ。 「おそよう、龍ニィ。もうお昼になるから起きて下さい?」 「何でっ…お前が此処に居る?!」 「何でって、今日は龍ニィにデートのお誘いに来たの。そしたらおばさんが『まだ寝てるから起こして来て?』って言うから起こしに来たのよ?」 「だからってなぁ…年頃の娘がホイホイ男の部屋に入ってくるんじゃねぇよ。襲われたいのか?」 乗っかっている私を押しのけて龍ニィは起き上がって前髪を掻き揚げる。 「フフッ。龍ニィになら襲われてもいいよ?」 「馬鹿言ってんな。ほら、起きるから先に下行ってろ」 そう言って、コツンと私の頭を叩いた。 冗談なんかじゃないんだけどね。 「はぁい。早く降りてきてね?」 ヒラヒラと手を振って龍ニィの部屋から出て行った。 一階に降りるとリビングでおばさんが紅茶を飲んでいた。 「あ、龍ニィ今から降りてくるみたい」 「そう。起こしてくれてありがとね?さ、降りてくるまでお茶でも飲んで待っていたら?」 そう言って、私の分の紅茶も淹れてくれた。 「はぁい。おばさんの淹れた紅茶、おいしくて好き♪」 「フフ。ありがとう。…そう言えば、今日はどこにデートに行くのかしら?」 「服が欲しくて、龍ニィに見立ててもらおうかなって思ってるの。龍ニィセンスいいから」 「そうね。あの子、服のセンスだけはいいものねぇ…」 紅茶を飲みながらしみじみ言うおばさん。 「だぁれが服のセンスだけ、だって?」 背後で声がしてびっくりして振り返った。 「あら、龍次居たの」 「気づいててわざと言ったくせによく言うよ。俺にも、茶くれ」 「はいはい」 おばさんは立ち上がってキッチンの方へと向かった。 「ホント、イイ性格してるよ」 そう言いながら私の隣に座る龍ニィ。 「急に声がしたからビックリした。気配ないんだもん」 「ん?まぁ、驚かそうと思ったんだけどな。さっきのお返し」 口端上げてニヤリと笑う龍ニィ。 あぁ、そんな笑顔も格好良すぎです。 「で?服が欲しいのか?」 「あ、うん。春物の服が欲しいなって。一緒に行ってくれるよね?」 お誘い、ではなく確認系で言葉を返す。こう言えば龍ニィは断らない事を知っててわざと言葉を選んだ。 ずるいとは分かってるけど、自分をどうにかアピールしたいし。 「あぁ、今日は予定ないしいいよ」 おばさんがお茶を持ってきて龍ニィの前に置いた。 「ありがとう。龍ニィ」 私の中でこれ以上無いと思っている極上の笑みを返した。 「ほら、龍次。さっさとお茶飲んで出かけなさい。あなたのご飯は用意してないから、外出たついでに食べてきなさい」 「ぁ〜?飯ぐらい作れっての」 「何言ってるの。もうお昼なのよ?葵ちゃんもお腹空くだろうし、久しぶりに一緒に出かけるんだからご飯ぐらい奢ってやりなさいな」 そう言っておばさんはこっそり私に向かってウィンクした。 ありがとぅ、おばさん!私、頑張るよ。 「しゃぁねぇな。ほら、葵さっさと行くぞ」 お茶を飲み終えた龍ニィは立ち上がってさっさとリビングから出て行こうとしている。 「あ、龍ニィ待って」 慌ててその背中を追いかけた。 とまぁ、初デートの朝はこんな感じに始まって。 春休みの間、龍ニィと毎日顔を合わせてデートした。 と言っても、殆ど龍ニィの後を邪魔にならないようについて回っただけなんだけど。 |