時空の刻印
それから、ヴラドは頭首として役目をそれなりに果たしていた。 命の花より与えられた時空の刻印によってリンネは長い間ヴラドの傍に居た。 二人は気の遠くなるほどの長い年月を変わらずに、いや寧ろ更に愛を深めていた。 今は既に三人は二人の手から離れている。 彼らが幼い頃は大変だった。 最近まで娘の結婚の事で揉めていたのだが、それも落ち着いた。
「リンネ、何してる?」 「何って、見て分かりませんか?」 リンネは読んでいる本を掲げて見せた。 「それは見れば分かるが・・・今何時だか分かってるか?」 「え?」 問われて窓の外へと向けると、随分と高いところまで月が登っていた。 「結構遅い時間ですね」 いつの間にこんなに夜が更けていたのだろう。 「本を読むのもいいが、そう言うのは俺が居ない時にしろよな」 「ごめんなさい」 リンネはヴラドの膝の上に座ると、首に腕を絡めてキスをする。 長い事一緒に居るのだ。 遠い昔、グラン家の一員だった頃。 薄く開いていたヴラドの口内に舌を差し込むと、拙い動作で相手のソレを絡め取る。 唇が離れた時、ニヤリと笑みを浮かべた。 「相変わらず、ヘタクソだな」 そう言って、再びリンネの唇を深く塞いだ。 「んっ・・・はぁ・・・」 触れ合う舌先から、熱が全身に伝わっていく。 唇を離すと、頬や首にキスを落としていく。 「はぁ・・・ぁ・・・」 器用な指がボタンを外して行き、素肌に手を這わしていく。 「ヴラド・・・さん・・・」 大きな手で胸を覆われ、掌で優しく撫でられる。 「触ってねぇのに、もう固くなって俺の事誘ってんな」 耳元でククっと笑われれば羞恥で顔が赤くなるのが分かった。 「やだ・・・そんなこと・・・ぁん・・・」 胸の先端を摘まれて、ビクリと身体が反応する。 深く交わる口付けの合間にも、胸を甚振るのとは別の手が、腰から下へと滑り降りる。 「んっ・・・ふ・・・」 甘い声が鼻から抜けるのを、リンネはぼんやりとした頭の片隅で感じていた。 「あっ・・・っ・・・ぁ・・・」 太腿まで降りてきた手が、内腿を強く撫でた後、更にその奥へと侵入を開始した。 「・・・これじゃ、下着なんて役に立ってないな」 「はぁんっ・・・」 下着の上から秘所へと指を這わすと、ヴラドの言葉通り、下着が意味を成さないほど濡れていた。 「ぁ・・っ・・・はぁん」 内部へと侵入してくる指を拒むように、キュと中がすぼまる。 狭い下着の隙間から、いつもの角度とは違う指が中を蹂躙していく。 「ぁ・・んっ・・・はぁっ・・・」 「すっげ、大洪水だな」 笑いながら、リンネの口端を舐め、唇を啄ばんだ。 「んっ・・・あぁ・・・はぅ・・・」 「何?もうイきそう?」 耳たぶを甘噛みしながら囁くと、コクコクと頷いてくる。 「んじゃ、好きなだけどうぞ?」 そう言うと、内部の指をより激しく動かした。 「あっ、はぁっ・・・んんっ・・・!!!」 リンネの身体が激しく震えた後、ぐったりとしてヴラドに凭れ掛かってきた。
「ん・・・?」 次に目を開けると、既にリンネもヴラドも何も着衣しておらず、ヴラドの上に覆いかぶさるように寝転がっていた。 「ヴラド、さん?」 「起きたか」 「はい・・・」 「んじゃ、続きだ」 チュと音を立ててキスをすると、リンネの身体に手を回して上体を起こさせた。 「えっと・・・?」 「今日は、リンネが上な?」 ニヤリと口元に笑みを乗せてそう言うと、リンネの顔は真っ赤になった。 「う、上って・・・その・・・」 「たまにはこういうのもいいだろ?」 「でも・・・」 ヴラドの太腿の辺りに座り込んで、視線をさまよわせる。 「ひゃっ」 「ほら、自分で入れるんだよ。出来るだろ?」 躊躇しているリンネの腰を持って身体を浮かせると、立ち上がっている高ぶりを入り口にあてがった。 「後は腰を落とせばいいんだ。簡単だろ?」 なおも躊躇するリンネに、腰を軽く叩いて先を促した。 「はっ・・・ぁぅ・・・」 ヴラドがするのと違って、ゆっくりと入ってくるそれは、いやに感覚がリアルに感じられる。 「座ってるだけじゃ、最後までいかないぞ?」 「っ・・・分かってますっ・・・ぁっ・・・・」 恐る恐る、ゆるゆると緩慢な動きで上下に動き出すと、それを楽しむかのようにヴラドは下から見上げる。 「ぁん・・・」 ゆらゆらと揺れる両方の胸を包むと、ゆっくりと揉みしだいた。 「いい顔してる」 艶っぽい眼でリンネを見遣り、その顔に手を添える。 「ふっ・・んん・・・」 差し込まれた指を夢中で舐める仕草にゾクゾクしたものがヴラドの中に生まれた。 「リンネに任せてると、いつまでたってもこのままだな」 「だったら・・・あぁんっ」 ベロリと自分の唇を舐めると、リンネの腰を掴んで下から突き上げ始めた。 手加減など一切しない動きに、自分の体重と相まっていつも以上に深く奥に突き刺さる質量に、既にリンネは限界寸前だった。 「あっぁつ・・・ヴラドさ・・・もぉっ・・・」 あまりにも激しい刺激に、首を振ると涙が数滴飛び散った。 「あぁ・・・イイ、ぜ・・・っ」 更に激しくなる律動に、ギュっと眼を閉じる。
永遠とも思えた幸せな時間は、いつしか終わりを迎えようとしていた。 ベッドで眠るヴラドの傍らで、リンネは椅子に座ってその寝顔を眺めていた。 苦しそうにうめくわけでもない。 ヴラドを見ながらリンネはふと思った。 永遠とも思えるその命は、自然の摂理に反しているから。 「ん・・・リンネ?」 「ヴラドさん、起きたんですか?」 うっすらと眼を開けたヴラドをリンネは覗き込んだ。 「そんなとこにいないで、こっちにこいよ」 ポンと隣を叩かれるとそれに頷いて、ヴラドの隣へと潜り込んだ。 「リンネはあったかいな」 「ヴラドさんも暖かいですよ」 腕枕をされて、胸に頬を摺り寄せた。 他愛も無いお喋りをしていると、ヴラドのまぶたが眠そうに何度か閉じられる。 「眠いなら、寝てもいいですよ?」 「あぁ・・・少し、疲れた・・・」 そう言って眼を閉じたヴラドを見た後、リンネも目を閉じる。 「私も、眠くなってきましたね・・・」 ヴラドの温もりを感じるように抱きついて、そのまま意識を闇に溶け込ませた。
――――――――ヴラドさんが居ない明日なんて、生きている意味ありませんから
ヴラドとその伴侶であるリンネは、最高の頭首だったと後々まで一族の間で語り継がれる事となる。
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