【6】 BACK | INDEX | NEXT
勉強、勉強であっという間に季節は過ぎ去っていって、もう星陵学園の合格発表の日がやってきた。
受かっている自信はある。でも、やっぱり不安は拭う事が出来なくて。


「あぁ〜〜〜。もう、ドキドキする!」

「葵ちゃんはいいよー。俺なんて、受かってたとしても絶対ギリだぜ?ギリ。鉛筆転がして決めた選択問題が合ってなきゃ合格なんて無理だよ」

「…透。そんなんで答案埋めたのか?」

滅多に感情を表に出さない海斗も呆れ顔。

それはそうだろう。いくら分からないといっても、大事なテストの答案を鉛筆転がして決めるというのもどうかと思う。度胸があるというか、ただの馬鹿と言うべきか。


一人で結果を見る勇気が無くて、透と海斗の三人で見に来る事にした。
こういう風に、話しながらなら気がまぎれると思って。
……実際は全然まぎれてないんだけど。


とうとう、校門から合格者が発表されている掲示板の前まで来てしまった。
掲示板の前には凄い人だかりが出来ていて、合格を喜んでいる人や不合格で涙を流している人。
その光景を見ていると、私の心臓がどんどん激しく高鳴ってくる。



「さって、自分の番号でも探すか〜」


そう言って、透は自分の受験番号の近辺へと移動した。
と言っても、同じ学校の透は、何気に私と近い番号だ。学校側で受験申し込みしてくれたから、当然のこと。

「じゃぁ、俺はあっちの方だから」

海斗もそう言って掲示板の前へと行ってしまった。


「……よし」

ギュっと握りこぶしをして自分に気合を入れると、人だかりを掻き分けて掲示板の前へと移動した。


3578……3578………



「………あ…」

あった…。受験番号3578。
もう一度、受験票に目を落として、また掲示板を見つめる。
うん。間違いない。



大声で、喜びたいけど隣で泣いている子を見るとそれも出来ない。
黙ったまま、掲示板から先ほどの所まで戻った。



既に透と海斗は戻ってきていた。

「どうだった?」

そう聞くと海斗は静かに頷き、透はVサインを出した。

「そっか…良かった」

にっこり笑って私もVサインする。


「よっしゃ!三人とも合格だって、龍次さんに報告だ!」

透の言葉を合図に、皆で校門へ向かって歩き出した。


「……・あれ?龍次さん?」

小さな海斗の言葉。でも、私は聞き逃さなかった。

「あ、ほんとだ」

校門から出て少ししたところに駐車してある車に寄りかかるように、龍ニィが立っていた。


「龍次さ〜ん!」

透も龍ニィに気づいたのか龍ニィの元へと駆け出した。

私と海斗はその後をのんびりと歩いていく。


「よ。その様子だと、三人とも受かったみたいだな」

ニっと口端を上げるように笑う。

「ま、俺の教え方が良かったんだろうけど?」

「ね〜。龍次さん、約束の美味しい飯は?奢ってくれるんでしょ?」

透は龍ニィの言葉を聞いているのかいないのか、何の反論もせずにそう言った。
ほんと、食意地が張っているんだから。


「ぉう。金ねぇからお好み焼きな?マジ、美味いぜ?」

「えぇ〜〜??お好み焼き?もっと高いもの想像してたのになぁ〜」

「ばぁか。高いからって美味いとは限らねぇだろ?…食わないならいいんだぞ?別に俺はそれでも」

意地悪く言う龍ニィ。そう言われれば透は絶対に行くって言うに決まってる。

「やだなぁ。行くに決まってるジャン!」

……ホラね。
完璧、龍ニィは透使いだわ。

隣にいる海斗と顔を見合わせてやれやれと言った感じに肩を竦めた。



お好み焼き屋でお腹を満足させた後、龍ニィの家に戻って朝まで合格祝いの騒ぎは続いた。

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