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エクスローディス王国の中でも比較的大きな街、ルノア。
大きな街特有の光と影が色濃く出ていて、街の中心部から西側に行くと無法地域へと足を踏み入れる事となる。
蟻の巣のように狭い路地が張り巡らされ、慣れない者を簡単に外に出さないような作りになっている。

その路地を歩く男が一人。
いや、二人と言った方がいいだろうか。
その男の肩には可愛らしい妖精がちょこんと座っている。

「ねぇ、ガイ。ここで合ってるの?さっきから怪しい人たちばっかりだよ?」

「あぁ、ここで間違いない。というより、此処のに住んでる怪しいじーさんに会いに行くんだしな」

「あたし、何か嫌な予感がする」

不安そうな顔をしてキュっと髪の毛に掴まった彼女の頬を指でチョイと撫でる。

「ま、此処の住人じゃない俺が歩いているんだし?何か起こるんじゃねぇの?」

「もぉ。悠長にそんな事言って」

ポフポフと小さな手で男の頬を叩いたとき、男が数人路地から出てきて声を掛けてきた。

「よぉ、にーちゃん。いいもんつれてんじゃねぇか。どうだ?俺に売ってくれねぇか」

そう言って指を五本開いてヒラヒラとさせる。
500ルピ、それとも5000ルピか。

世の中には裏で珍しい生き物を売買する組織があるという。
この男は恐らくその組織の一員なのだろう。
見た目からして下っ端である事は間違いなさそうだ。

ニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべるその男たちへシニカルな笑みを向ける。

「いやだね。そんなはした金でこいつを渡すわけないだろ?」

「ガイぃ。早く行こうよ」

その言葉に頷いて一歩足を踏み出すと、行く手を阻むかのように他の男が前に立ち塞がった。

「じゃぁ、これなら文句ねぇだろ」

両手を目の前に出して見せる。さっきの倍額まで金が釣り上がった。
そんな男の様子を嘲笑い、口を開いた。

「ばーか。幾ら積まれたってこいつはやらねぇよ。俺の、大事な恋人だからな」

一瞬の静寂の後、男たちは一斉に大声で笑い出した。

「アハハハハ!こいつぁいいや。言うに事欠いて恋人だとぉ?そいつの身体じゃ、恋人としての役目果たせてねぇだろうが」

他の男たちも馬鹿にしたような笑みを浮かべている。

「いいぜ、そっちがその気なら…お前ら、力づくでそいつを奪うぞ!」

その言葉が終わると同時に、男たちが一斉に飛び掛ってきた。

「ったく、面倒だな。ティア。掴まらないように上の方で飛んでな」

「うん」

パタパタと羽を広げて、宙へと舞い上がる。
大きな男でも届く事が出来ない高さへと。

男たちが繰り出してくる攻撃を避けて、的確に急所へと攻撃を与える。
上から見ていると、それはまるで踊っているかのようで、ティアは現状も忘れて思わず見とれてしまう。
長い足から繰り出された蹴りは、男のこめかみを捕らえ地面に沈める。
鉄板入りのブーツはそれだけで、攻撃力は十分だった。

「あっ、ガイ!危ない!」

男の一人が腰から短剣を取り出すと、ガイヘ向かって振りかざした。
ティアの声に寸でのところで攻撃をかわし、男との間を置いた。

「ヘッヘッヘ。そっちは丸腰だ。どうやって甚振ってやろうか」

「剣は得意じゃないんでね。使わない主義だ」

「ハッ!じゃぁ、ますますそっちに勝ち目はねぇな。大人しく降参したらどうだ」

「勝ち目はない?それはどうかな」

ガイはニヤリと笑みを浮かべると、一気に間合いを詰める。
男も即座にそれに反応して剣を振りかざした。
ガイにそれが当たりそうになった瞬間、キィンと金属がぶつかる音がして男の手から短剣が弾かれた。

すかさず回し蹴りを当て、男の身体を飛ばすと、腕を振って手から手ほどの長さしかないナイフを投げつけた。

壁に当たった男の服を縫い付けるかのように、そのナイフは突き刺さった。

「別に、剣は使わないと言ったが、道具は使わないとは言ってないぜ?」

ヒラヒラと手のひらを見せ、甲を向けたその時、ガイの手には更なるナイフが5本握られていた。

「そのナイフ、どこから…」

「どこからって、そこら辺から」

そう言って宙を指し示す。
何もない空間から取り出したとでも言うかのように。

男はグっと身体に力を入れて、両肩の付近に刺さっているナイフから服を引き千切ろうとする。
しかし、幾ら力を入れてもナイフは外れないし、服も破けなかった。

「お、お前…魔導士か…?」

「魔導士?んな大したもんじゃねぇよ…ティア、行こうぜ?」

上から戦況を見守っていたティアに優しい笑みを向けて手を差し出す。

「うん」

ティアは嬉しそうに下に降りて、その手の上に止まった。

「あ、そうだ…おいあんた。ダージルじぃさんの家、知らねぇか?」

地面に叩き伏せた男どもは既に逃げてしまっていて、壁に縫い付けられている男のみだ。
その男に今までの事が何事も無かったかのように話しかける。

「へっ、あ、あんた…ダージルさんの知り合い、かよ」

「まぁな」

「そっそれならそうと早く」

「そっちが勝手に絡んできたんじゃないの」

ティアの言う事は尤もである。
ベェっと赤い舌を出すと、再びガイの肩へと飛び移った。

「ダージルさんの家はこの地区の奥だ。案内するぜ」

ダージルという人物はそれ程凄い人なのか。
名前を聞いただけで手の平を返したような態度にガイは肩を竦めると、パチンと指を鳴らした。

途端、男を拘束していたナイフが消える。

「んじゃ、案内して貰おうか?」






ダージルの家に着くと、ガイを連れて来た男に事の経緯を尋ねて来た。
しどろもどろになりながらも男はようやく話し終えると、ダージルの機嫌を伺うかのように下から見遣った。

「ハッハハ。お前らが束になって掛かってもガイには勝てまいて」

ダージルの機嫌を損ねていないのだと分かると、男はそそくさと出て行った。

ダージルという老人は、この無法地帯の中でも一目置かれている存在である。
既に年老いて本人に戦う力は無いが、彼を取り巻く者達がごろつきの間でも恐れられている人物ばかりだった。
故にダージルに刃を向ける人物など、この辺りには一人も居なかった。

「んで、俺に何の用だ?」

ダージルに対してこんな口をきけるのも数少ない。
ガイはダージルの知り合いではあるが、彼を取り巻く人たちとは違う。
ただ縁があった。それだけの事。

「お前さん、ここを出たら隣町に向かうんだろう?コレを孫娘に届けてくれまいか」

差し出されたのは一通の手紙。

「手紙、か。通り道だし、別に構わないぜ」

それを受け取ると、腰に付けている小さなバッグと仕舞った。

「んじゃ、俺はもう行くわ。此処は空気が悪くてティアの身体に毒だ」

「あぁ、また遊びに来なさい。そちらの、お嬢さんもな」

「此処は遊びに来るところじゃねぇよ。じゃぁな」

「ハハハ。違いない。気をつけて行きなされ」

「バイバーイ」

二人は老人に手を振って、そこを後にした。
「思っていたより、いいおじいちゃんだったね」

「あぁ見えて、敵に回したら恐ろしいじーさんだぜ?」

「えー、そうなの?人って見かけによらないんだねぇ。あ、もう隣町まで行くの?」

「あぁ。そんなに遠くないし、夜には着くだろ」

「うん。じゃぁ、レッツゴー」

とは言っても、ティアは肩に乗っているだけ。
ガイはルノアの街を後にし、隣町へと向かって歩き始めた。
隣町へ向かう途中。
緩やかな坂道に差し掛かると、道の脇には先端に黄色い色をつけた蕾が沢山あった。
中には開き始めているものもある。

「もう少しだな」

「もうすぐだよ」

そんな会話を交わしながら、二人は小さな丘を抜けて隣町へと入っていった。


それから、数日後。
「ガイ!咲いた、咲いたよ」

嬉しそうにガイの周りを飛び回るティアの姿があった。

「あぁ、そうだな」

「まだちょっとだけ足りないけど、数時間だけなら大丈夫」

そう言ってティアはベッドに腰を下ろしているガイの膝の上にちょこんと座った。
そして、そっと目を伏せる。

その身体が徐々に徐々に大きくなっていき、ガイの視線の高さまで来ると、変化が止まった。
目を開けると、にっこりと笑みを浮かべる。

「久しぶり、大きなティア」

ガイは優しく笑みを返すと、ティアの唇に自分のそれを合わせた。
ベッドにティアを押し倒すと、オレンジ色の服を脱がせていく。

「ティア…ティアナ…」

「ん、ガイ…」

ティアの名前はティアナだ。ガイはこの時しか彼女をそう呼ばない。
小さい時とを区別している訳ではない。
いつの間にか、こういう風に呼び分けるのが定着してしまった。
年に一度巡って来る特別な時。
だからそう呼んでしまうのかもしれない。

妖精特有の白い肌に唇を落とし、所有の証を幾つも付けていく。
手の中に柔らかな膨らみを収めると、優しく愛撫していく。

先端に口をつけて、舌で転がすように刺激をしてやれば、ティアの身体がビクンと反応する。

「んっ…ぁ…」

「ティアナ、可愛い…」

身体をピンクに染めて、全身で与える刺激を受け止めるその姿に笑みを浮かべる。
スラリとした脚を開かせると、その奥にある敏感な部分へと指を滑らせる。

既にしっとりと湿っていたそこは、刺激を与えるたびにガイの指を濡らしていく。

「も、トロトロだな」

「ぁん…そんな事、言わないで…」

胸の先端に刺激を与えながら、ゆっくりとぬかるみの中へと指を挿入していく。

「ちょい、キツイな…大丈夫か?」

「ぅん…平気…ぁっ…ん…」

ティアの表情を伺いながら、ゆっくりと指を抜き差しする。
最初は拒むように硬かった内壁も次第にやわらかくなり、溢れ出た蜜は指の動きの手助けをする。

「ッ!あ、あぁ…んんっ」

ティアの口からも甘い声が漏れ、ガイの肩に乗せた手に力がこもる。

「いい声。もっと聞かせて」

若干身体を離し、ティアの身悶える姿を眺める。
その瞳には欲情の色が灯っている。

「久しぶりだからな…一度イっとけ」

ガイは足の間に滑り込むと、ぬかるんだ秘所へと舌を這わせる。

「ぁんっ…」

途端ビクリとしなる身体。
閉じそうになる足を身体で押さえ、敏感な突起へ刺激を与える。
ならすように徐々に挿入する指を増やしていき、ティアの感じる部分を的確に攻め立てる。
舌のぬめりとした感触。的確にポイントを責める指にどんどんと身体は熱くなっていく。

「あっ、んっ…はぁっ…も、駄目ぇ…」

ビクビクと内壁が指を締め付ける。
甘い声を出しながら、ティアの身体がしなる。

身体の力が抜けたのを見計らってそっと指を引き抜いた。

「はぁ…はぁ…」

「お疲れ、ティアナ」

「ん…」

そっと目蓋にキスを落とし、ティアの息が落ち着くのを待つ。

「ガイ、大好き」

「あぁ、俺もだ」

にっこりと笑みを浮かべて、首に腕を回してきたティアの唇に、自分のそれを重ね合わせた。

「んんっ…ぅ…」

ティアの唇を塞ぎながら、ゆっくりと中へと進入を開始する。
約一年ぶりに開かれたそこは、指で慣らしたとは言えガイの侵入を拒むかのように、内壁が押しやってくる。

「キツ…」

ガイとてそう余裕があるわけではない。
キュっと締め付けてくるそこに思わず呻く。
気を抜けば今すぐにでも達してしまいそうだった。

「ぅん…はぁ…」

「ティアナの中、すっげぇ熱い…」

「ガイも、暖かいよ」

口付けを交わし、ティアの中が落ち着いたのを見計らってゆっくりと律動を開始する。

「ああんっ、ガイぃ…あぁ、うっ…んっ」

「はっ…すげ…っ…」

動くたびにギシギシとベッドが悲鳴を上げる。
奥まで突き上げると、ティアの中から蜜が溢れ出しシーツを濡らしていく。

余裕が無さそうなガイの表情。
こんな時ぐらいしか見ることが出来ない。
また、そうさせているのが自分だと思うと嬉しさが込み上げて来る。

「ぁっ…は、んっ…気持ち、いい…」

「っ…ん、俺も…」

律動を早めると、ティアから荒い息遣いと甘い声が漏れる。
熱い塊が内壁を擦るたび、ピクンと身体が跳ね内壁がキュっと締まる。
それを堪能するかのように、中の感じる部分を攻め立てた。

「ガイぃ…あぁんっ、ふ…あっ…」

お互いの身体を密着させ、激しい口付けを交わす。
舌を絡ませ合い、口内を愛撫する。

くぐもった声がティアから漏れ、限界とばかりに唇を離した。

「も、あたし…や、無理…っんぁ…」

息も絶え絶えに訴えるティアの頬に口付けると更に律動を速める。

「んんっ、あっ…っく…あぁぁんっ」

最奥を攻めた瞬間、一層強く内壁に締め付けられた。

「ッ…く…」

ティアが果てるのから僅かに遅れ、ガイもまた熱い欲望を吐き出した。

肩で息をするティアに軽く口付けると、中から抜け出す。
横向きになったティアの背後に回ると、後ろからそっと抱きしめて肩に唇を落とす。

「始まったばかりだもん。まだ、こうやって居られるね」

「あぁ、そうだな」

ティアは背中の温もりに安心したかのように瞳を閉じた。


ティアはタンポポの妖精だ。
タンポポが咲くこの時期になると、太陽の光を沢山浴びたタンポポの力を借りて人間くらいの大きさになる事が出来る。
その時間はタンポポがどれだけ咲いているかに比例する。

次の日、目が覚めた頃にはすっかり元の姿に戻ってしまったけれど。
タンポポはまだ咲き始めたばかり。
年に一度だけ巡って来るこの季節。
二人の蜜月はまだ続きそうだ。


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