幾千の時を越えて 12
「んっ…」
私の唇を啄ばむように、何度も何度も雷焔の唇が降りてくる。
ファーストキスの余韻に浸る間もなくセカンドキス、サードキス…もう何回したか分からない位に雷焔とキスを交わしてる。
私の初めてを全部雷焔にあげられるなんて凄く嬉しい。
見た目のせいで今まで恋人なんて居なかった。
でも、今はこの見た目に感謝したいだなんて、現金かな?
「ぁ…」
息を吐き出して薄く開いた唇から、雷焔の舌が進入してきて私のを絡め取られた。
舌の付け根から痺れるような感覚が身体全体に広がっていって、身体が小さく震えてしまう。
思わず雷焔にすがり付くと、腰を抱えて支えてくれた。
息も出来ないくらいにドキドキして、どうしたらいいか分からない。
私にできる事と言えば、崩れ落ちてしまわないように足を踏ん張るだけ。
身体を巡る痺れに頭がボウっとしてきた時、雷焔の唇が離れていった。
…ぁ……凄く、やらしい…
お互いを結ぶ銀色の糸が切れたのを見て、思わず顔が赤くなってしまう。
「顔、赤くなってる。恥ずかしいか?」
雷焔が私の顔を覗き込んで、笑みを見せる。
この笑顔が、私だけに向けられてるものだと思うと凄く嬉しい。
雷焔の言葉に小さく頷くと、雷焔の笑みは意地悪そうなものへと変わった。
「もっと恥ずかしがらせてやるから、覚悟しとけ?」
「ぅえ〜…そんな…」
もっとってどんな事されるの?!ドキドキしすぎて心臓止まっちゃうよぉ…。
抗議しようとする私の唇を深く塞がれて、そのままベッドへと押し倒された。
雷焔の唇が頬から首へと移動していく。
時折キツク吸い上げて赤い痕を散らしていく。
私が雷焔のものだって言う証。ずっと付いたままで居てくれたらいいのに。
雷焔がシャツのボタンに手をかけたところで、ぼやけていた意識が覚醒した。
「雷焔、明かり消して?」
「消したらフィーアが見えないだろう?」
「だって、恥ずかしいよ…」
「言ったろ?もっと恥ずかしくさせてやるって」
「そんなぁ…」
意地悪く言う雷焔に、思わず涙目になってしまう。
雷焔てばこんな時まで意地悪じゃなくていいじゃない…。
私がよほど情け無い顔をしていたのか、雷焔は苦笑いして一つキスを落とすと、ベッドサイドにあるランプの火を消してくれた。
「あんまり、意味ないみたいだな」
雷焔の言葉の通り、明かりを消しても大きな窓から差し込んでくる満月の光で、お互いの姿が闇にはっきりと映し出されていた。
「カーテンも…」
「駄目。此処まで譲歩したんだから、フィーアも譲歩して欲しいね」
………駄目……ですよね…。
すっごく恥ずかしい!もぅ、どうしよう…
そんな事考えているうちに、雷焔はどんどん先に進んでしまって、気付けばシャツのボタンは全部外されてしまっていた。
「隠したら、何も出来ないだろ?」
思わず両手で空気に晒された胸を隠してしまうと、雷焔はその手の甲に唇を落とした。
「ひゃっ」
キスかと思いきや、舐められてしまって、驚いて思わず手を離してしまった。
露わになった胸を雷焔の大きな手が優しく包み込む。
自分以外の人に触られるのは初めての事。恥ずかしくって、ドキドキして、身体が震えてしまう。
「ぁっ…」
柔らかく胸を揉まれて、その先端に指が触れるたびに身体に痺れが走って思わず声が漏れてしまう。
やだ…私ってば何て声だしてるの…?
唇を噛み締めて、声が出てしまわないようにしていると、雷焔の指が唇を撫でた。
「唇噛んだら切れるだろうが。気にせず声出せよ」
「だって、変な声出ちゃうもん…」
「俺がフィーアを感じさせてやれてる証拠だろ?もっと聞かせろよ。フィーアの可愛い声」
そう言いながら唇を撫でていた雷焔の指が口の中に差し入れられて、舌を撫でられた。
「指、舐めて?」
そう言われて雷焔の指に舌を絡ませる。
何だかその行為にいやらしい気分になってくる。
「んっ」
胸の先に温かい感触がして、反射的に喉が鳴る。
舐められている胸の先から、じんわりと暖かい感触が身体に広がっていく。
「ぁっ…んぅ…」
痛いくらいに立ち上がってしまった先端を口に含まれて、舌で愛撫されて。
口から指が出て行ったのにも気付かずに、声を上げてしまった。
一度開いてしまった口は、声を押さえることが出来ずに雷焔の愛撫に反応して何度も鼻にかかったような声が漏れた。
片方の手が、脇腹を通って下へと下りていく。
そのたびにゾクゾクとした感触に身体が震えた。
普段は触られたらくすぐったいだけなはずなのに…雷焔に触られているというだけで違うものなの?
「あっ…」
シャツも何時の間にか脱がされていて、スカートも取り去られてしまった。
今、私を覆っているのは頼りないショーツだけ。
「雷焔…私だけなんて恥ずかしいよ…」
雷焔は服を全部着たまま。私はほぼ裸に近い状態。
二人を見比べて、身体中が恥ずかしさに熱くなってしまう。
「あぁ、悪い」
シャツを脱ぎ捨てて、雷焔の身体が闇に浮かんだ。
自分とは違う逞しい身体。ドキンと心臓が一つ跳ねた。
「ゃんっ…」
いきなりショーツの上から溝を撫でられて、ビクンと腰が揺れた。
やだっ…何?!
今までに感じた事のない刺激が一気に身体を駆け抜けていく。
雷焔の指がソコを撫でると身体が無意識に跳ねてしまう。
ゆっくりとショーツが脱がされていくのを霞のかかった頭で認識していた。
今度は直に指が触れてくる。先ほどとは比べ物にならない位の刺激が身体を襲う。
「あぁっん…」
雷焔の指がある一点に触った時、今までにない位に身体に痺れが走った。
「やっ…雷焔、そこ、何…」
「フィーアの感じるところ。気持ちイイか?」
「気持ち、いい…?」
この感覚が?良く分からないよ…。
「ぁっ…あぁんっ…」
雷焔の指が滑るように動いて、執拗にソコを攻め立てる。
何かに支配されているように、自分の身体じゃないみたいに勝手に声が出てしまう。
「フィーア、可愛いよ。もっと、感じてる顔見せて」
雷焔の顔が近づいてきて、優しくキスされる。
それだけでさっきまでの怖さが払拭される。
安心感が身体中に広がって、力が抜けたところに雷焔の指が中に入ってきた。
「キツイ?」
ギュっと目を閉じて首を横に振ると、ゆっくりと動かし始めた。
内部を擦り上げながら、更には一番感じる部分を擦られて何が何だか分からなくなってくる。
「ぁっ…あんぅ…らい、えん…身体、変だよぉ…」
私の言葉に更に雷焔の指が激しさを増していく。
お腹に雷焔の唇の感触を感じた時、頭の中が真っ白になった。
「…お帰り?フィーア」
気付くと雷焔に抱き締められていて、顔を覗き込まれていた。
「あれ…私…?」
「軽く意識飛んでた見たいだな…それくらい感じてくれて、男冥利に尽きるけどな」
「ぇ…やだ…」
顔を真っ赤に染めると、雷焔は優しく微笑んでくれた。
「そろそろいい?」
雷焔の言葉が理解出来ない訳ではない。一呼吸して覚悟を決めるとコクリと頷いた。
何時の間にか雷焔も裸になっていて、それが恥ずかしくて目を閉じた。
「なるべく痛くないようにするけど…痛かったら悪い」
「ううん。平気だから…」
言いながらギュっと目を瞑ると唇に暖かい感触がした。
目を開けて見ると間近に雷焔の顔があった。
「そんなに身体硬くしてたら余計に痛いだけだから。力抜いておけよ」
「そんな事言ったって…んっ…」
唇を深く塞がれて、熱い舌が入り込んでくる。
歯列をなぞられ、舌を絡めとられ、時々舌を強く吸われる。
頭がぼうっとしてきて、雷焔の身体にすがるように首に腕を回した。
「ンンッ!」
下半身に痛みを感じて朦朧とした意識が急に覚醒する。
「痛いか?」
「んっ…平気…続けて?」
ホントは全然平気じゃない。だけど、此処で怖気づいちゃったら先には進めないもの。
雷焔は一気には押し進めず、入口の辺りを出たり入ったりして、徐々にその深さを増していく。
胸を揉まれ、先端を擦られる。
下肢の鈍い痛みと、胸の甘い痺れとが混ざり合って何が何だか分からなくなってくる。
「ッん」
鈍い痛みが身体を走った後、雷焔にギュっと抱き締められた。
「…全部、入ったの?」
「あぁ」
「今、私達一つになってるんだね」
身体はちょっと痛いけど、心は凄く幸せな気持ちが広がっていく。
好きな人とこうして抱き合えて、身体が喜びに震えた。
このまま時が止まってくれたらいいのに…。
「雷焔、好き…」
「あぁ、俺も好きだ」
そう言って軽いキスをすると、ゆっくりと律動を始めた。
「フィーア…大丈夫か…?」
涙の溜まった目尻にキスを落としながら心配そうにそう尋ねてくる。
本当は少し痛いけど、こうやって居られるのが幸せで、「大丈夫」と笑みを向けた。
「フィーア…」
徐々に動きを早めながら私を揺さぶる雷焔の口から、私の名前が漏れる。
その事が嬉しくて、私から雷焔にキスをした。
「ぁ…っ…何か…」
最初は痛いだけだったのに、段々と痛みの向こうに甘い痺れを感じて雷焔にしがみ付く。雷焔の熱い息が耳にかかって更に身体が震えた。
「フィーア、可愛い…」
ため息をつくように雷焔が呟く。
上気した顔の雷焔は凄く色っぽくて、ドキドキしてしまう。
好きな人と抱き合うのって、こんなに幸せなんだ…。
段々と激しくなる律動に、翻弄される。
痛みはいつしか薄れていて、身体に広がるのは甘い刺激だけになっていた。
「ぁっ…んっ…雷焔…っ…」
汗でしっとりとした肌に自分の肌を合わせる。
雷焔もギュっと抱き締め返してくれて、幸せで息が漏れた。
「雷焔…好きっ…私を離さないで…」
終わりが来るその日まで、傍に居させて…。
「あぁ、離さない。ずっと俺の傍にいろ」
嬉しい。その言葉だけで十分だよ。
沢山の幸せをくれてありがとう、雷焔。
「フィーア…ッ…も、そろそろ…」
「ぁっ…あんっ…雷焔っ…」
激しく身体を打ち付けてくる。
一層激しく突き上げられた時、身体の中に雷焔の熱を感じた。
その後、恥ずかしいと抗議する私に「今更だろ?」と言ってお風呂場に連れて行かれた。
クタクタで腕も満足に動かせない私の身体を雷焔は楽しそうに洗って、一緒に湯船に入った。
ロウソクの火だけ灯したお風呂場で、暖かいお湯に浸かっていると、段々と意識がもうろうとして来る。
「フィーア、眠いのか?」
後ろから私を抱きかかえている雷焔が顔を覗き込んで来る。
「ううん…平気…」
そう言いながらも、重たい瞼が閉じてくる。
「オヤスミ。フィーア」
最後にそんな雷焔の言葉が聞こえ、頬にキスをされたような気がした。
「……ん…」
朝日が顔に当ってゆっくりと瞼を開けた。
「おはよう。よく眠れたみたいだな」
「えっ、あっ、雷焔っ」
目を開けた途端に飛び込んできた雷焔の顔に恥ずかしくて、思わずシーツで身体を包んだ。
「ククッ…なぁに、照れてるんだよ?昨日、全部見せてもらったから安心しろ?」
「何を安心しろって言うのよぉ…だって、部屋明るい…恥ずかしいよ」
「フィーアはホントお子様だな」
可笑しそうに笑ってからかう雷焔を上目遣いで睨む。
「ま、そう言うところも可愛いんだけどな?……それにしても、魔力格段に上がったな」
「うん…何か、持て余し気味なんだけど…」
「ま、直ぐにその状態にも慣れるさ」
「うん」
コクリと頷くと、「イイコだ」なんて良いながら髪を撫でてくれた。
これから戦いなのに、なんて緊張感の無い朝なんだろう。
「さ、支度するか」
そう言って優しく私に口付けをしてベッドから抜け出した。
大好きな人と初めて迎える朝。
幸せで、恥ずかしくて。
切なくて、少しだけ胸が痛んだ。
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