| 王都筆頭魔導士密着レポート 私、雷焔様にお仕えしているピクシーのギィです。 雷焔様にお会いしたのは数ヶ月前の事。 ゴブリンに危うく食べられそうになっているのを助けて頂いたのです。 それから、ずっと雷焔様にお仕えしようとお傍に居させて頂いています。 今日は女中の方々に脅され・・・いえ、頼まれて雷焔様の一日をレポートする事になりました。 いやいや。人間の女ってのは怖いですね。 鬼気迫るものがありました。思わずその場から姿を消す事を忘れてしまうくらいに。 おっと。そろそろ夜が明けますね。 雷焔様の元へと向かいましょう。 雷焔様の朝はとっても早いです。 お日様が昇る前には起き出します。 ちなみに私、本日は隠密行動と言う事で、姿を消して雷焔様の傍に居たいと思います。 雷焔様はまず、起きたら隣にあるバスルームへと向かいました。 寝る前にも風呂に入っているようですが、朝にもどうやら風呂に入るようです。 綺麗好きなんでしょうね。 早速私も風呂場へと潜入です。 男同士ですから、恥ずかしがる事もありません。 雷焔様は既に熱い湯船に浸かっておりました。 あぁ、あの均等の取れた身体。羨ましい限りです。 私も雷焔様のような体つきをしていたら、ゴブリンなんぞ一ひねりだったでしょうに。 おっと。雷焔様はお風呂から上がられるようです。 朝は短めなんですね。 服を着た雷焔様がまず向かったのは、お城の周りに張ってある結界のポイント。 全部で五箇所あり、それらから見えない結界が張り巡らせ、それぞれのポイントを繋げているのです。 「っし、異常はないな」 ポイントをじっくりと確認しながら見て回ります。 誰かが結界を壊そうとしていないか、それを確認しているのです。 とはいえ、結界に何かあったらその時に分かるんですけどね。 ポイントを確認するまでも無いとは思うのですが・・・それを怠らないとは素晴らしい事です。 若干日が昇ってきたところで、次に向かうのは訓練場です。 雷焔様が訓練場に付くと、既に時雨さんが来ていて剣を磨いていました。 「ハヨ。相変わらず遅刻魔だな」 「遅刻魔って・・・まだ定刻になっていないと思うけど?」 「俺が来る前に先に来とけ」 「ばぁか。お前はどれだけ偉いんだっての」 そんな会話をしながら楽しそうにしている雷焔様と時雨さん。 あぁっ羨ましい。私も雷焔様とあのようにふざけ合いたいものです。 それにしても、朝早くに訓練場に来てお二人は何をするつもりなのでしょうか? 近くの木に座ってお二人の様子を見ていると、軽く運動をしたお二人は剣を向け合いました。 そしてお互いに一歩を踏み出したのです。 なるほど・・・こうやって剣の練習をされているのですね。 もしや、私が知らなかっただけで毎日行っているのでしょうか? お二人の力は互角・・・いえ、雷焔様の方が若干下でしょうか。 それは、仕方のない事でしょう。雷焔様は魔導士なのですから。 これで時雨さんよりも力があったりしたら、きっと世界最強でしょうね。 キィン、キィンと音を鳴らしながら、剣を交えているお二人。 表情は真剣そのもので、お互い一歩も譲る気はないようです。 「あっ」 思わず言葉が出てしまい、慌てて口を塞ぎました。 時雨さんの剣が、雷焔様の頬を掠めました。 雷焔様の頬から薄っすらと血滲みだし、あっという間に血が頬を伝います。 その頬を雷焔様が拭うと、不思議な事に既に傷跡はありませんでした。 雷焔様は、自己治癒力が高いのでしょうか? それとも、自動回復の術でも掛けているのでしょうか? 「小さな傷はあっという間に治っちまうな。戦いに出た時便利だなぁ」 そんな事を時雨さんはのんびりとした口調で言いました。 「こっちはイイ迷惑だよこんな身体。お前みたいに血が止まらねぇっ・・・って慌ててみたいね」 「誰がんな事で慌てるかっての!!!」 「ふぅん?この前の戦いで俺に泣きついて来たのは誰だったかなぁ?」 「ばっ、バカ野郎!泣いてなんかいねぇよ!!」 「そうだったか?」 顔を真っ赤に染めた時雨さんを雷焔様はからかいます。 確かに、あの時時雨さんは泣いては居ませんでしたが、物凄く蒼白な顔して歪めていましたね。 これもまた、二人のコミュニケーションなんでしょうね。 それにしても・・・こんな身体とは一体? 雷焔様は謎多きお方です。 そこがまた、魅力なんですけれどね。 二人は一通り汗を流した後、剣を鞘に収めて訓練場を出て行きました。 きっとこれから食堂に向かうのでしょう。 朝食を終えた後、しばらく経って雷焔様が向かったのは、会議室でした。 デューク王を初め、この国の偉い人たちが集まっています。 これから話し合いが始まるそうです。 私には人間の話している内容は難しすぎて良く分かりません。 気づけばウトウトと眠ってしまいました。 目を覚ますと、既に会議は終わっていて部屋には誰も居ません。 雷焔様を早く探さねばっ 雷焔様の気を辿っていくと、デューク王と話しながら廊下を歩いているのを発見しました。 「そういや、今度姫さんと結婚するんだよな?姫さんが逃げ出したときは、どうなるかと思ったが、案外上手く行ってんだな?」 ニヤニヤと笑みを浮かべながら、雷焔様はデューク王に言いました。 「いい加減、その話で私をからかうのは止めろ。もう過ぎた事だろう?」 「いやいや。幾ら政略結婚とは言え、相手に逃げられた王様なんて滅多に居ないだろう?」 「それは・・・姫が勘違いされていたからだ。仕方ないだろう」 「部下を殺す事も厭わぬ冷徹な王様・・・ねぇ?一体何処でそんな話し聞いたんだか」 「誤解は解けたんだ。もう気にしてないさ・・・それより、お前は恋人は作らないのか?相変わらず、あっちこっちにフラフラしてるようだが」 そうデューク王に言われた途端、雷焔様の表情が曇りました。 「お前こそ、俺にそれを言うのか?」 「・・・・・・悪い」 「いいさ。仕方ねぇ事だ」 渋い顔をしてしまったデューク王に寂しそうな笑みを向けて、雷焔様は廊下が分かれるところでデューク王とは別の道を歩いていかれました。 やはり、雷焔様には何かあるようです。 何かあった・・・と言うのが正しいのでしょうか。 午後からは雷焔様は魔導士たちと術を開発したり、未熟な魔導士の指導をしたりしています。 今日は、時雨さん率いる剣の使い手たちと実戦訓練のようです。 剣士は魔導士との戦い方を、魔導士は万が一接近戦になった時の戦い方を訓練しています。 やはり、遠距離になると魔導士が有利になり、近距離になると剣士が有利になるようです。 とは言え、この城に居る魔導士も剣士も他のに比べものにならない位にお互いの戦い方を分かっているようです。 日頃の訓練の賜物という事でしょう。 雷焔様も時雨さんも、朝とは違い剣と魔術で戦っています。 こうなると、雷焔様の方に軍配が上がります。 やはり、雷焔様はお強いです。 夕刻、雷焔様は用が無い限り何時も同じ場所に向かいます。 このお城で一番高い場所。 塔の天辺です。 浮遊術を使い、塔の上に座ると沈んでいく夕日を眺めています。 そこに居る雷焔様には、今日みたいな隠密行動の時で無くても話しかける事は出来ません。 何故だか、話しかけてはいけないような雰囲気があるのです。 そこに座って夕日を眺める雷焔様は、悲しそうに見えました。 夕日で赤く染まっているのが余計にそう思わせるのかも知れません。 さて、すっかり暗くなって部屋に戻られた雷焔様は、書類に目を通したりして未だに仕事をしています。 王都筆頭魔導士ともなれば、やらなければならない仕事は沢山あるのでしょう。 時には寝ずに仕事をしなければならない時もあるようです。 仕事を終えた雷焔様は、お風呂に入った後ベッドへと潜り込みました。 そろそろ寝る時間なようです。 私のレポートもこれにて終了したいと思います。 「・・・そういや、ギィ?今日一日俺に付いて回って、何だったんだ?」 寝たと思っていた雷焔様が、消えている筈の私の方を見ました。 いやはや、気づかれていたとは。 さすが、雷焔様ですね。 終 |