「谷口さん」 「うん?なぁに??」 とある日の放課後。新聞部の部長南絵を呼び止めた。 「貴女にお願いがあるんだけど、聞いてもらえるかな?」 「えっと、私にできる事ならいいよ?」 「貴女にしかできない事なの!お願い。協力して?」 「そうなんだ、何したらいいの?」 「それは――――――――」 「修二君、今日泊まりに行ってもいい?」 「あぁ、いいよ。明日学校だけど、大丈夫なのか?」 「うん。大丈夫だよ。パパの許可は取ってあるから」 南絵がそう言うと、修二は笑って頷いた。 |
塚本修二行動記録 AM:6:00―――起床 学校で眠そうにしている割には結構修二君の朝は早よね。 と言っても、起きてから1時間以上はテレビのニュース見ながらボーっとしてるの。 その間に私が朝ごはん作ったりしてるんだ。 私が居ない時ってどうしてるのかなぁ? ちゃんと朝ごはん食べてるのかなぁ??? でも授業中にお腹が鳴ったの聞いた事ないし、きっと食べてきてるんだよね。 「修二君、ご飯出来たよ?」 「あぁ・・・」 今日の朝ご飯はトーストにサラダにベーコンエッグにカップスープ。 至って普通の朝ご飯。 「いただきまーす♪」 二人で手を合わせてご飯を食べる。 朝の修二君は動きが遅くって、ご飯を食べるのもマイペースなんだよね。 下手したら私のほうが早く食べ終わっちゃう事だってあるもん。 「ごちそうさま・・・」 修二君はそれだけ言うと食べた食器を全部流しへと持って行ってくれた。 そのまま無言で洗面所へと行ったみたい。 時計を見ると7時30分になったところ。 きっとこれからシャワーでも浴びるのかな? 私も支度しなくちゃ。 AM:8:00―――登校 修二君の家は学校から徒歩20分ぐらいのところにあって八時に家を出れば間に合うの。いいなぁ・・・うちもこれだけ近かったらもっと遅くまで寝ていられるのにな。 修二君も眠いならもっと遅く起きればいいのにね・・・あ、でもそうなったら起きるのが遅くなった分だけ遅刻しちゃうって事なのかなぁ?? 何だっけ?低血圧っていうんだっけ? 良く分からないけど、大変だよね。 修二君と一緒に登校してると、何故だか皆立ち止まって道をあけるの。 なんだろう?早く学校行かないと遅刻しちゃうのにね。 教室へ着くと私に向かって万理ちゃんが手を振ってくる。 私もそれを返しながら修二君と席へと向かう。 修二君はそのまま席について、先生がHRに来るまで目を半分にしてじっとしてる。 まだ眠いんだろうなぁ・・・ HRが終わった後、校内清掃。 昼休みに清掃する学校もあるみたいだけど、うちの学校は朝やるんだよね。 身体動かすから少しは眠いのも飛んでいくかも。 修二君は無言のままもくもくと掃除をこなしていく。 絶対サボったりなんてしないんだよね。 AM:9:00―――授業開始 今日の時間割は1限:生物、2限:数学、3限:英語、4限:音楽、昼休み、5限:現国、6限:歴史。 昼休み後の現国の時間はおじーちゃん先生で、皆お昼寝タイム。 私も凄く眠いけど、おじーちゃん先生が大好きだからちゃんと寝ないで授業聞いてるんだ。 修二君も、半数以上が寝ちゃってる中ちゃんと授業受けてるの。 眠くって学校では無口な割にはちゃんと授業のノートも取ってるし、成績だっていいんだ。同じ授業を受けてるのに全然成績が違うのは何でかなぁ? PM:4:00―――授業終了 私も修二君も部活動をやってないからよほどの事がない限り一緒に帰るの。 修二君は今日は空手道場に通う日。 私もこの記録を書き上げる使命があるから今日は一緒に道場に行かなきゃね。 PM:5:00―――道場 「ちわ」 すっかり目が覚めたらしい修二君は、道場に入るなり元気にご挨拶。 中に居た小学生も負けずに元気に挨拶して来た。 「あー、南絵ちゃんだー!今日は見学なの?」 一番の仲良しの小学校5年生の満君が近寄ってきた。 「うん。最後まで見学してるよー。カッコいいとこ見せてね?」 「おぅ!任せとけっ!」 得意そうに胸を叩く満君がすごく可愛い。 きっと、弟が居たらこんな感じなんだろうなぁ〜。 「じゃぁ、南絵。大人しく見てるんだぞ?」 更衣室で空手着に着替えた修二君が優しい目で頭を撫でてくる。 嬉しくなって うん。て頷いて道場の端っこを陣取って床に座り込んだ。 最初は準備運動から始まって、筋肉トレーニング。 道場の端から端へ移動しながら突きとか蹴りとか練習して。 それが終わったら二人一組で受身とか突きとか蹴りとかの練習。 うんうん、やっぱり修二君が一番カッコいい♪ それが終わると今度は型の練習。新しい型を覚えたり、覚えている型を練習したり。 沢山あって、私にはどれがどれだか分からないなぁ・・・ 良く全部覚えていられるよね。 まだ他にもあるって言うんだから、私に空手を習うのは無理だなぁ・・・ 『ありがとうございましたーー!!!』 皆の掛け声で、本日の稽古が終了。 小学生は空手着のまま道場に来てる子ばっかりで皆そのまま帰ってく。 「南絵ちゃん、またねー!」 満君も手を振って空手着のままお家に帰っていった。 「南絵、今日はうちに来るのか?」 「うん。」 「じゃぁ、行くか」 シャワーを浴びて出てきた修二君の髪はしっとりと濡れてた。 手を繋いで修二君のお家に向かった。 PM:9:00―――帰宅 これからご飯を作ると遅くなっちゃうから帰ってくる前に外のお店でご飯を食べた。 色んな定食があるお店で、私はからあげ定食で修二君はほっけ定食を食べた。 「南絵、風呂は?」 「うん、入るよー」 「一緒に入る?」 「うん!」 という訳で、修二君と一緒にお風呂タイム♪ 修二君の家のお風呂は凄く広くて、二人で入っても狭く感じないんだ。 お風呂の中でエッチな事をされちゃう時もあるけど、殆どゆっくりお風呂に浸かっているの。 私の頭を洗ってくれる修二君の手はすっごく気持ちよくって、いつも寝ちゃいそうになるんだ。 お風呂から出たら私の頭を乾かしてくれるの。 これも修二君の手が気持ちよくって、またソファでうとうと。 やる事が終わると修二君はパソコンの前に座って寝るまでお仕事。 修二君のお父さんは何かの社長さんで今アメリカにいるんだ。 修二君はそのお手伝いをちょっとだけしてて、良く分んないけどなんか・・・プログラム?うん。確かそうだった。プログラムを作成してるんだって。 毎日夜遅くまで起きている理由はそれ。 後はアメリカに居る弟君とチャットしてるの。 私はその間にベッドの上で黒猫のマメと遊んだり本を読んだりしてるんだけど、何時の間にか寝ちゃってる事が多いな。 ベッドに入ってきた修二君で目が覚めて。 それから優しくキスされて・・・ きゃ〜〜〜〜!!!こんなの書いてもいいのかな? いいか、少しぐらい。 すっごく修二君は優しくてね。『可愛い』とか『好き』とか『愛してる』とか言ってくれるんだ♪ こんな感じで修二君の一日は終わります。 私が居ない時はもう少し、夜の過ごし方は違ってくるのかもだけど、多分、殆ど一緒だと思う。 以上、谷口南絵でした。 |
「はい。部長さん頼まれてたの出来たよ?」 「あ、谷口さんありがとう」 「いえいえ♪どういたしまして♪」 南絵はレポート用紙を手渡すと、足取りも軽く去っていった。 「まさか、ちゃんと書いてきてくれるとは思わなかったわ・・・」 新聞部部長は渡された紙に目を通す。 「・・・・・・これって、塚本君の行動記録というよりは・・・谷口さんのラブラブ日記・・・ね」 ふぅ・・・と溜息を付いて紙を鞄に仕舞った。 「まぁ、ところどころ削除すれば記事に出来るでしょ。今回の新聞の特集はこれに決まりね。」 新聞部部長は不敵な笑みを向けて廊下の奥へと消えた。 毎月新聞部から発行されている新聞は一部100円。 主に学校生徒に関する記事が載っていて、売れ行きはまぁまぁだ。 売上金は新聞部の部費として使われている。 南絵からのレポートにより組まれた『塚本修二特集』の載った新聞は、いつも以上に売上があったという・・・。 終 |